ゆかたにうちわ、縁側でかき氷。そう聞いただけで、どこからか涼やかな風が吹いてくるような気がするから不思議です。
電気やガスなど通っていなかった時代、日本人はじつにさまざまな方法で「涼」を暮らしに取りいれてきました。うちわや扇子で「風」を作り出すのもそのひとつ。決してつよくはないけれど、その風は自然な清涼感をもたらします。
うちわの歴史は古く、古代の中国やエジプトの壁画に登場するほど。日本に伝えられたのは飛鳥時代といわれています。あおぐだけでなく威厳を示すために、宮中行事でつかわれたりもしました。相撲の軍配にそのなごりがみてとれますね。
空調機器の発達でその生産数は減少していますが、日本のうちわの種類は大きく3つ。「京うちわ」「房州うちわ」そして「丸亀うちわ」です:
<京うちわ>
細い骨を数多く使い繊細で雅なデザインと、うちわ面と「柄」が別々に作られるその構造が特徴的です。宮廷で使われた「御所うちわ」がルーツですので、材料や工程には細心の注意が払われてきました。切り絵を使った観賞用の「透かしうちわ」も京うちわの1種です。
<丸亀うちわ>
うちわ生産の全国シェア90%を占めているのが、香川県丸亀市の特産品「丸亀うちわ」です。「穂」とよばれるうちわ面と「柄」とが一続きになっているので、とても丈夫なのが特徴です。
<房州うちわ>
房州といわれていた千葉県南部は、良質な竹を江戸へ送り出す産地でした。しかし大正12年の関東大震災で、日本橋の問屋街の大半が火事に見舞われたことから、職人たちがこの地に移り、うちわを生産するように。
「エコロジー」を地球環境への配慮ととらえるなら、私たちにもできることはたくさんあります。たとえば、耳にタコができるほど幼いころから教えられた、電気やガスを無駄遣いしないということ。それを実践できるひとつの方法が「うちわ」かもしれません。そのエコでやわらかな自然の風は、冷房で冷え切ってしまった私たちのカラダにもやさしくそよぎます。
エコの作法で、地球に、自分に、やさしい夏を過ごしてみませんか。
<photo> tokyo uchiwa, spiral online store.