「朝煎茶」のススメ 〜 夏の朝、煎茶を飲むとよいその理由とは?

 

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この夏は、朝起きたらまず一煎。


だるおも〜
エアコン、つい口にしてしまう冷たい食べ物や飲み物、そして連日の熱帯夜が引き起こす寝不足も。予想外に冷えている夏の身体は、代謝が落ち疲労回復しにくいのが特徴です。これが続くと夏バテに…。
こんな季節にオススメしたいのが、朝起きたら一煎(いっせん)の「煎茶」をいただくこと。お茶に含まれる有効成分「カフェイン」は、体内にたまった老廃物を排出し、さらには脳の働きを活発にしてくれる効果があることがわかっています。連日の暑さでぐったり、なんとなく目覚めが悪い、そんな朝にうれしい効果ばかりなのです。
煎茶を日常の生活に取り入れて夏を健康に過ごしてもらおう! 2014年7月19日、和ゴコロ研究所は、広島を起点とし「煎茶道」を広める三癸亭賣茶流さんとのコラボレーションでワークショップを開催しました。
煎茶道ということばが耳慣れないかたもいらっしゃるでしょう。同じ茶道でも、抹茶を使いお点前をみにつける「茶道」とは異なるものとして位置づけられています。ワークショップの様子をお伝えする前に、煎茶道の歴史をすこしだけ紐解いてみることにいたしましょう。
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お菓子をのせる懐紙とクロモジ。二つ折りにして使うときは、輪のあるほうを右側に。


煎茶は緑茶の種類のひとつです。緑茶とは、生の茶葉を発酵させずに製造した不発酵茶で、煎茶(せんちゃ)、玉露(ぎょくろ)、番茶(ばんちゃ)、抹茶(まっちゃ)、焙じ茶(ほうじちゃ)など、さまざまなお茶をまとめた呼び名なんです。中でも現代まで日本人に愛飲されてきた緑茶の代表が「煎茶」。茶葉を蒸して揉みながら乾燥させたものです。
お茶が最初に日本に入ってきたのは、奈良時代から平安時代。中国文化へのあこがれとともに、茶を飲む習慣が貴族たちの間で大流行しましたが、当時のお茶は団茶とよばれ独特の風味をもつ日本人にはなじめない味のものでした。やがて遣唐使が廃止され、中国へのあこがれが消え去ると、お茶を飲む習慣もじょじょに日本からなくなっていきます。
次にお茶が日本にもたらされたのは鎌倉時代。茶葉は摘んだあと放置すると自家発酵をはじめますが、そこに熱を加えて発酵をとめると、緑の葉のままになります。それを粉にして飲むという方法が当時の中国にはありました。をれを持ち帰ったのが、仏教をまなぶため中国にわたった僧侶 栄西です。
栄西が持ち帰った抹茶は、緑色で美しく、青々とさわやかな香りがし、苦みとたもに甘みがある。こうした抹茶の特徴が日本人の好みにぴたりとはまり、「茶道」という日本人独自の文化にまで昇華させることとなります。
当時の「茶道(抹茶)」はアッパークラスの人たちたけに開かれた特別な楽しみでした。庶民がいつからお茶をのむようになったのかについての記述は断片的ですが、緑茶が登場するのは1730年のこと。京都 宇治の茶師であった「永谷宗円」(いまの「永谷園」創設者)が緑茶を発明し全国に広まります。
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器をあたため、一息につぎわけます。


江戸後期から幕末、明治維新にかけては、幕府側の保守的な教養としての「茶の湯」に対し、「緑茶」を飲むことは、文人(学問、詩歌、書がなどに関心を寄せるひと)にとっての革新的な「喫茶趣味」の象徴、という構図が成立します。
そして日清戦争が終わり、日本へのナショナリズムが起こると千年以上も文化的手本だった中国が退けられ、西洋を新しい手本とするようになります。コーヒー、紅茶などを嗜むことが最先端とされ、こうして日本独自の道を歩んできたお茶はその影を落としていくことになるのです。
歴史のお勉強はこのへんにして、ワークショップの様子をおつたえしましょう。
まずはじめに各自の自己紹介、お茶の歴史を簡単に学び、ゲストの三癸亭賣茶流(さんきていばいさりゅう)  家元の広報として活躍する 島村満穂さんに、煎茶道お点前をみせていただきました。畳からテーブルスタイルへ日本人の生活様式が変化するなか、家元が独自に考案したテーブル向きのお点前です。流れるように続くその所作は、見ている者にも美しく、すがすがしい気持ちになりました。
2種用意したお菓子のうちのひとつ、HIGASHIYA ひと口果子

2種用意したお菓子のうちのひとつ、HIGASHIYA ひと口果子


参加者のなかから2名のかたにお点前を体験してもらいました。そのうちのおひとり、岩井さんは以前から煎茶道に興味があり、ぜひ体験してみたいと心待ちにしていたとのこと。その手順は決して簡単なものではありませんが、大切なのは「おいしいお茶をいれたい」という心。さて、岩井さんの淹れたお茶は…
「どこか馴染みやすい味」「いつも飲んでいる味」「先生がいれたものよりさっぱりしている」と意見はさまざま。ですが正解なんてないのです。同じお湯、同じ茶葉、同じ分量、であっても、淹れるひとによって味や香りが異なるのが「お茶」なのですから。
急須でつぎわけ、みんなで味わう、そこに調和がうまれる、それがお茶を喫する醍醐味。最近はペットボトルで飲まれる機会が多く、ひとり一本という個々の感覚になっているのが残念です…。
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体験者の岩井さん。緊張した面持ちですが、おいしいお茶がはいりました。


ワークショップでともに時間をすごすうち、「最初のころは気になっていた周囲の音が、そのうち気にならなくなりました。この場に一体感がうまれ、ここがお茶室になっていくんですね」とうれしい発見をしてくれた、参加者の石水さん。
ワークショップ後のおしゃべりタイムでは、茶器を持っているけど使う機会がない、持っている道具を持ち寄って美味しい煎茶を淹れたい、子供と一緒に習いたい、カジュアルなスタイルで習いたい、などの声が。
これらを受け、今後は茶具持ち寄りのお茶会、子どもさんと一緒に楽しめるお教室、など、どんどん企画していきたい、と島村満穂さん。煎茶道の未来が楽しみです。
急須でいれるお茶の魅力が存分にわかったところで、自分自身のために「お茶」をいれることも素敵な時間になることをぜひ体感してみてください。起きぬけにいただく一煎のお茶が、すこやかで楽しい夏の日々を彩ってくれることでしょう。
煎茶道三癸亭賣茶流 Facebook
(参考) YUCARI vol.10「おいしい日本のお茶」、山本山ホームページ「お茶のはなし
(photo) Pinterest  / Flickr

2 Comments

  1. 石水

    イベントに参加させていただいた石水です。
    翌朝、さっそくおみやげにいただいた煎茶を淹れてみました。急須とマグカップにお湯を入れて温める。茶葉にゆっくりぬるめのお湯を注ぐ。そのゆるやかな動きがとても心地良いです。いい一日のスタートになりますね。「今日はちゃんとお茶を淹れてみたのだけど…。」と家族との会話も生まれました。朝煎茶、続けてみます。

  2. mango1001

    コメントありがとうございます!その後実践していただけたなんて嬉しいかぎりです。家族の会話がうまれた、というのがとても素敵ですね。こうしたささやかな変化や暖かな体験が幸福な毎日をつくっていくのだと思います。また感想きかせてください。

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