「くどきなさい」ってこと 〜 CMでよみがえる『みだれ髪』

“やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君”
あまりにも有名な、与謝野晶子『みだれ髪』のこの一節を、女優 真木よう子さんがつぶやく、トヨタの新型ハイブリッド車「SAI」のCMが気になります。
[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=VDS4GIsqAks&w=320&h=240]

現代語訳をするならば、
「いつだって仕事や付き合いばかり。こんなに温かく柔らかな私に触れることもしないで、あなたはさみしくならないの? たまにはくどきなさいよ」
といったところでしょうか…。
これまでの「SAI」は”環境に優しいセダン”という、どちらかというと真面目路線な印象でした。それだけでは振り向いてもらえないと、カッコいい、モテるクルマというイメージを吹き込みたかったのだそう。
昭和の面影残る、危険な香りのする女性が思いを寄せるも、振り向いてくれないちょっぴり硬派な男性…。そのシチュエーションを表現するために起用されたのが、真木よう子さんです。
そこに与謝野晶子の歌が添えられるのですが、硬派な男性にじれったさを感じる、抑えきれない女性の胸のうちが手にとるように分かります。
与謝野晶子は、明治に生きた女流歌人。最初の歌集『みだれ髪』は、当時 女性が表現することなどあり得なかった愛する人へのほとぼしる思いや欲望を自由奔放に表現し、歌壇に大きな衝撃をあたえた作品です。
彼女の活動は、短歌創作にとどまらず、古典文学研究や女性の自立と地位の向上を目指す教育活動にまで多岐にわたりました。
CMという形で知ることになる明治初期の歌。そこからわかるのは、今も昔もじれったいのが男女の仲…ということなのかも。

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